アスベスト被害

アスベストのばく露による労災認定者は、毎年約1,000人(平成28年度:1,057人)、 アスベスト救済法でも毎年約1,000人(平成28年度:1,081人)に給付決定されています。 アスベストによる中皮腫で2000年から40年間で10万人が死亡するという研究もあります。 アスベスト被害は終わっていません。今後数十年間、被害発生は続くのです。

アスベスト被害は建設業や製造業だけの問題ではありません。

学校の教職員や石綿工場周辺住民などにも被害が広がっています。 近年大規模災害が続いていますが、アスベスト建材を使っていたビルの倒壊やがれきの処理で、 作業員やボランティアとして被災地に赴いた人にも被害が発生しています。

アスベスト被害の救済と根絶は国民全体の課題です。

「静かな時限爆弾」アスベスト

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アスベスト(石綿)は、繊維状の天然鉱物です。アスベストの繊維は非常に細く、一本の太さは髪の毛の5000分の1くらいです。熱や薬品に強く摩耗に耐えるなどの特性があることから、燃えない「奇跡の鉱物」といわれ、建設、造船、鉄道、発電所、製鉄所をはじめ多くの産業で建設資材や工業材料として使用されてきました。

しかし、アスベストの繊維を吸い込むと、肺の奥にまで入り込み、数十年後にガンになる恐れがあることが分かっています。例えば、悪性胸膜中皮腫(胸膜の中皮細胞から発生するガン)では、潜伏期間が40年前後で発症する事例が多いことが報告されています。吸っていたことを忘れた頃に発症するため、アスベストは「静かな時限爆弾」と呼ばれて恐れられています。2005年以降、毎年1000人前後の人々がアスベストによって肺ガンや中皮腫になったとして労災認定されています。

アスベスト(石綿)とは

アスベスト(石綿)は天然にできた鉱物繊維で、「燃えない」「摩耗しにくい」「引っ張りに強い」「薬品に強い」「混ざりやすい」などの特徴があり、また、安価であるため電気製品や自動車、家庭用品等の様々な用途に使用されてきました。そして、その輸入量の7割が建設資材で使用されました。

しかしその実態は、命を奪う危険な鉱物だったのです。

アスベストの繊維は、非常に細く空気中に浮遊し、それを吸い込むと肺に付着しやすいという特徴があります。

肺に付着したアスベストは長い潜伏期間を経て、石綿肺や肺がん、中皮腫などの病気を引き起こすのです。

  • chrysotile

    クリソタイル(温石綿、白石綿)

    ほとんど全ての石綿製品の原料として使用される。世界で使われた石綿の9割以上を占める。

  • amosite

    アモサイト(茶石綿)

    吹き付け石綿として使用される。主に茶石綿は各種断熱保温材に使われていました。

  • crocidolite

    クロシドライト(青石綿)

    吹き付け石綿として使用される。主に青石綿は石綿セメント高圧管に使われました。

アスベストが起こす健康被害

アスベストは、主に呼吸器の病気を引き起こします。吸い込んでから10年以上経ってから発症し、吸い込み続けていなくても症状が進行するという特徴があります。

human injury
胸膜肥厚班 きょうまくひこうはん
吸い込んだアスベストが、肺を覆う膜に突き刺さった傷がかさぶた状になったもので、肺の働きは悪くなりません。アスベストを吸い込んでから15〜30年以上経って確認できるようになります。
肺がん  
アスベストは発がん性があり、肺がんを発症しやすくなります。アスベストによる肺がんは発症までの潜伏期間が長く、アスベストを吸い込んでから30年以上経ってから、肺がんを発症することが多く見られます。
中皮腫 ちゅうひしゅ
アスベストが原因による肺や肝臓、胃などを覆う膜にできる腫瘍です。他のアスベストが原因の病気と比べて、発症までに40年前後かかり、より少ないアスベストの量で発症の危険があるという特徴があります。
じん肺  
粉じんが肺の奥まで入り込むことで、肺が固くなって呼吸困難になる病気です。少しずつ症状が悪くなり、普通の生活でも息苦しさを覚えるようになります。よく見られる症状は息切れ、咳、たんです。合併症は肺がん、結核、気胸などがあります。
石綿肺 せきめんはい
アスベストが原因のじん肺です。肺がんや中皮腫などを合併することがあり、注意が必要です。アスベストを吸い込んで10年以上経ってから症状が現れます。

建設従事者への被害

こんなところにアスベスト

1930年から輸入を停止する2005年までの75年間で、約1,000万トンのアスベストが輸入され、その内の約7割が建設資材に使用されてきました。木材住宅においても、アスベストが使用されています。建設資材を取り扱うのは、建設従事者です。アスベストが含まれた建設資材は建設現場で加工・裁断されるため、建設従事者は大量のアスベスト粉じんにばく露し、被害も建設従事者に集中したのです。

  • asbestos slate
    石綿スレート波板
  • rock wool
    吹き付けロックウール
  • colonial
    アスベスト含有屋根材
house

アスベストの最大の被害者は建設従事者

このアスベストの危険は1960年代から知られており、国もアスベスト製造企業もその事実を知っていました。しかし、国と企業は、人の命よりも経済発展と会社の利益を優先し、有効な対策を取ることを怠り、長期にわたり建設従事者の命を危険にさらして、働かせ続けました。

アスベストを原因とする労災保険給付は、2005年以降1,000人前後と推移しており、2016年における石綿関連疾病による労災認定者は1,068人で、約半数(589人)は建設従事者です。建設従事者は、国民の命と生活を守るために、誇りをもって建物をつくり、生活インフラを整備しています。しかし、その建物に含まれていたアスベストが原因で、建設従事者の被害者を多く生み出すことになってしまったのです。

業種別労災支給状況

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